クレームと入会面談
立て続けにクレームをいただく。
クレームはたいてい、ほんのささいな、しかし重要なミスが原因となる。
今回もそうであった。
似たようなことで複数の家庭からご意見を頂戴するということは、それは偶然でなく慢性的に生じている不具合であるということなわけだし、声をあげずにただ不満に思っている家庭も多くあるはずだ。
顧客に、サービスを提供するどころか、迷惑をかけている。不安を与えている。
電話が入ったタイミングもよくなかった。入会面談の最中。たまたま面談室から出てきたときに、講師が応対していた電話を受け取ってしまった。
顧客を待たせたまま、クレームへの対応。確実にこちらが悪い。しかし今は面談の最中だ。早く電話を終わらせて、面談に戻らなくては。
電話の相手へ、今面談の最中であり、面談後に必ず対応させていただく旨を正直に伝える。普段ならこんな言い方はしない。今面談中などというのは、完全にこちら側の都合であり、わざわざクレームの電話を入れてくれた相手に失礼だ。
だがこのときは頭が回らなかった。正直に言う以外の選択肢が思いつかなかった。
丁寧に切電。通話時間8分。慌てて面談に戻る。
着席し、致命的な事態に気付く。
自分の頭のなかが、クレームのことでいっぱいになっていた。目の前にいる相手のことを考えられない。考えようとしても、断続的に意識が「あちら側」に引っ張られる。
サイテーだった。ビジネスマンとしても、教育マンとしても、全く誰のためにもなれなかった。
入会するはずもない。
他の塾も見るという。
ふだんなら、ここで反対克服のトークを入れる。が、今日はできなかった。あっさりと顧客を帰してしまった。
今日、私はなにひとつその親子を惹きつけられていない。おそらく、他の塾に決めるだろう。それも、全て検討し終えて家で相談して決めるのでなく、どこかでいい営業マンに出会って、即決をするだろう。
クレームは何も生まない。
クレームをくれたその顧客への迷惑。
そこから派生する周辺業務への影響。
クレームに集中する私の傍で、他の業務を一生懸命こなしてくれたアルバイトの部下たち。
クレームは何も生まない。
挽回し、成長するほかない。
悔しい。
もっとマシな人間になりたい。