教育営業マンのビジネスblog

教育を売っている。教育ビジネスには、言うまでもなく、二つの軸がある。教育とビジネス。その、「ビジネス」の側面にフォーカスして語るblog。都内在住。

心を誘導することは行動を誘導すること「相手に気づかれずに相手を動かす心の誘導術」内藤誼人

 

 

 

心理学は営業マンが習得すべき必須の学問のように思う。

最近では、大学は心理学科に入ってみたかったと思うほどだ。

 

心理学の本はいくつか読んだが、最近手にしたタイトルの書も役に立つものだったので、簡単だがレポートする。

 

心理学者である筆者が、具体的な心理学の実験等をもとにすぐにツカエル心理学の技術を紹介する。

ひとつひとつのテクニックが、3ページずつでまとめられており非常に読みやすい。紹介されているテクニックも誰にも真似しやすいものばかりなので、即効性がありそうだ。

 

個人的にすぐに使ってみたいテクニックを列挙する。

 

●伝聞でにおわせると相手は暗示にかかりやすい

⇒人が言ったことや噂話として伝える方法。

⇒活用例:自教室を通っている生徒・保護者の言葉で褒める

 

●前もって伏線を張っておく

⇒「事前予告」。これからしようとすること、とりわけ相手にとってリスクやダメージのある内容を、「もし…だったら○○するよ」と先に伝えておく。

⇒心理的負担の大きいこと、いわゆる「面倒くさいこと」は、早めに伝えたほうが、精神的コストが少なくすむということらしい。

⇒活用例:「ダメだったらあっさり断ってもらっていいんですけど、話を聞いてみてもしいいな、頑張ってみたいなって思ったら、思い切ってここで決めちゃいなよ」

 

●人を誘導したいならきちんとした服装を

⇒権威を感じさせるためには、服装の力も重要。

クールビズで半袖が許容される世の中だが、ネクタイとジャケットは身に着けたほうが、権威や信頼を感じさせることができる。

⇒実践済み。

 

●まずは相手を信用させることが前提条件

⇒誘導を成功させるには、「この人の言うことは信頼できそうだ」と感じさせることが前提となる。

⇒小手先だけではダメということ。当然だが、教務の知識・学校の知識・子どもをやる気にさせるスキルなどが必要になる。

⇒一方、逆説的だが、そういった「本質的知識・本質的スキル」を上手にアピールするには、心理学の誘導の手法が有効だと考える。

つまり、教育者としての資質と心理学者としての資質、どちらも等しいバランスで成長させないと教育営業マンとして一流は目指せないということだ。

 

●「手の動き」で相手を巧みに誘導する

⇒縦にうなずく動作を繰り返すと、人は「イエス」の返事をしやすい心理状態になってしまうそうだ。

⇒そして、人は縦に動くものを無意識に目で追ってしまう。

⇒相対する相手からイエスをもらいたいときには、ジェスチャーに「縦に動く手」を入れるとよい。

⇒しかしこれこそ先述の「信用が前提条件」が当てはまるスキルだと思う。

 

●キーフレーズは少しだけ大きな声で

⇒一本調子・フラットなしゃべり方は、相手に伝わりづらい。こちらが伝えたい重要なポイントを、わずかに大きな声で伝えると、説得力が増す。

 

●言葉でなく行動でアピール

⇒「やる気がある」と口に出すより、早い時間にその場に到着するほうが、説得力がある。

⇒実践:出勤は30分以上早く勤務場所に到着する。

 

●誘導を成功させるには「勢い」が大事

⇒説得力は、話の内容だけでなく、声の力強さや話者のテンションにも左右される。

⇒営業のシーンでは、元気よく、自信を持って。

 

●交渉ごとでは、最初に大きな提案をぶつける

⇒最初の提案が基準点となり、それより難易度の低い後の提案が通りやすくなる。「アンカリング」という技術。

⇒活用例:「もし週5回だと費用はこちらです…、では週3回だといかがでしょうか?費用はこちらです。」

「夏休みは、これくらい学習をするとよいと思うんだけど、どう?・・・あっ多いかー。だったらこれくらいできると、この単元まで勉強進むからいいと思うんだけどなー、、、おっ大丈夫そう?じゃあお母さん、この回数だと費用は・・・」

HUNTER×HUNTERのジンも、言及していたテクニックです。曰く、「チンピラと詐欺師の常套手段さ」。

 

●キミに向いているとあえて決めつける

⇒相手にこちらの望んだ行動をとらせたいときに、「君は○○な人間だね」とレッテル貼りをする。人は、他人から言われた自分像を意外と安易に信じ込む傾向がある。

⇒活用例:「○○くんって、実は受験に向いているタイプだねー」「○○くんには・・・の指導法ぴったりだと思うよー、正直向いてない子もいるんだけど、○○くんなら・・・」

 

●相手の本音を見抜き、その方向で誘導する

⇒「誘導のテクニックが本当に効果を発揮するのは、相手が少しでも「その気」になっている場合だけである。」(引用)

⇒上記の言葉がすべて。繰り返すけれど、「信頼が前提条件」ということなのだと思う。

 

●同じセリフを繰り返す

⇒大切なことは繰り返して伝える。「安いよー」でなく、「安いよ、安いよ、安いよー」。

⇒活用例:「こうすれば、○○くん、成績上がる上がる上がる!」

⇒ちょっとちゃらいというか、いかにも営業マンらしいトークになってしまいかねない気もする。嫌味にならない程度に使って、少しずつ自分のモノにしていこう。

 

●自己暗示は何度も繰り返せ

⇒自分の成長は自分の意志が決める。

⇒セルフイメージを高く持つ。

⇒そのために、トランス状態に入るためのルーティンを決める。そのルーティンを常に意識し、繰り返すことで、思い通りにトランス状態に入れる体質をつくる。

 

以上。

あとがきで著者も述べているが、当たり前といえば当たり前のことも多い。あ、これもうやってるなーということもいくつかあった。しかし、それでいい。

以下は僕自身の考えだ。

 

①誘導は、大前提として「信頼の構築」が必須である。

誘導の技術は、いわば表面的な誘導なのであって、根っこのところから相手の思考や行動を変えさせるには、「信頼」が最も重要。誘導の技術を特別な「必殺技」だと思い込み、それのみに頼ることにはむしろリスクがある。

 

②当たり前のことこそ、積み重ねて効果がある。

誘導の技術に「知っている/使っているものがある」ではダメ。「知らない/使っていないものがある」ことが問題。

誘導の技術は、いわば相手に合わせて様々なスキルを組み合わせて使いきって、ようやく「イエス」の閾値にぎりぎりたどりつくかどうかというものだと捉えるべきだ。

 

③さまざまな人が、違う言い方で同じことを言っているのだということに気付く。

社内で受けた営業研修で、「相手の価値観を知ることが重要だ」とあったが、これはまさに本書で言われていた「相手の本音を見抜き、その方向で誘導する」に当たる。

他の本や他の人が伝えてくれたことの証左を、心理学という学問が私たちに与えてくれる。

自身の中で確証の深まった知識は、身体化されやすいはずだ。