あくまで即決を目的とする
久しぶりのブログ更新。
本日面談のご家庭。
不登校経験があり、本人はコンプレックスが強い。
何か尋ねるといつもお母さんのほうを見てから答える。
自信がなく、様々な判断を母親に委ねてきた証左。
自分は勉強ができない、という意識がとても強く、かわいそうにすらなった。
まずは仲良くなる。
お天気トーク。
雨が降っていないことは確認していたが、曇天だったので、雨は大丈夫でした?と気遣うところからスタートする。
母親主導かと思いきや、本人は一度話し始めるとつらつら話してくれる子だとわかった。もっと仲良くなりたい。
勉強から派生して、趣味の話を振ってみる。
本人の好きなことがわかった。
運良く、私の好きなことと重なりのあるカテゴリであった。会話を広げる。
頷きが増える。笑い声が起こる。
よし。
本人の警戒が少し薄れたと感じた。
価値観引き出しルーティーン。
志望校のことを聞く。公立高校志望。お金のことを気にするかもしれない。
兄弟の有無を確認。ひとりっこ。受験は初めてだ。わからないことが多い可能性がある。
話していくと、母も本人も、やはり塾の費用のことをとても気にしていた。
費用イメージルーティーン。
月々どれくらいの費用をイメージしていますかぁー。
夏期講習のみで考えている、との返答。まさか。そしてイメージしていた金額もかなり少ない。
現状から目標まで、夏だけの学習で達成できる内容では到底ない。初めての受験で、親子とも、受験のリアリティを感じられていない。
ここで注意したのは、無理です!という否定の意識を表に出さないこと。絶対に否定してはいけないと直感した。そうした瞬間、少しずつ積み上げてきた信頼は不信に変わる。先日、高校生の入会面談で失敗したばかりであった。
ここでの意識が、後あと功を奏した。
先に行った他塾では、限られた予算で「目標を達成できる」と言い切っていたらしい。明らかに無理な話で、他塾のオーバートークはもはや詐欺にしか思えなかったが、ここでこちらが正論じみた勝手な判断をぶつけていたら、顧客は可能だと言ってくれた他塾に流れていただろう。本当に危なかった。
他塾の話が出たので深掘りして聞いてみると、ディスカウントを含めかなり営業をかけられていることがわかった。もっとも、母親に営業をかけられたという意識はない。他塾のほうが、こちらよりも良い条件の授業を数多く提供できるようであった。顧客に迎合しただけの成果の望めないプランに思えたが、顧客にとってはニーズを叶えてくれる魅力的な提案に映っただろう。
ここが分水嶺だと思った。
私は面談室を出た。
もうひとりいた社員に相談する。どうすればいい?
その人の答えは、体験授業を案内することであった。即決を諦め、ファクトをしっかりとって、こちらの提案の確実性を伝えていく。時間はかかるが、他塾にかけられたまやかしを解くにはそれが確実だと。
たしかにそうかもしれないと思った。しかし、これだけ話して諦めたくはなかった。すでに、通常であれば契約を結び終わっている時間であったのに、まだクロージングすらしていないのだ。時間をかけて丁寧に進めてきたのだから、どうしても決めたかった。預かりたかった。
腹を決めた。
体験授業に流れることも覚悟したうえで、誠心誠意どうすれば成果を出せるかを伝えるしかない。
数パターンの見積もりを手に、私は面談室へ向かった。
他塾の金額から、提案した回数も大体予測がついていた。
同じ予算内に収めるばあい、コマ数では負けていた。しかし方法はある、と思った。
覚悟を決めて、ふだんは絶対に行わない他塾批判をした。
他塾さんはいい塾ですが、この回数で全科目を面倒見てここまで到達できるというのは、どう考えてもオーバートークです。
ゆっくりと、しかし一息に言った。
そして、そう判断したわけを丁寧に説明した。
自社テキストを持ち込んだ。中身を見てもらい、復習の必要なボリュームを確認してもらった。
この量を、5回の授業でわからない箇所ゼロにできそう?
スグに首を横に振る。自信のない子だから、そう答えることはわかっていた。しかし、ここまで来てやっとほっとしたのも事実…。それくらい、決死の覚悟で口にした他塾消しトークだった。
さらに信頼を確固とするために、自分の経験もたっぷりと話す。驚きながら聞いてくれた。授業見学に行く。席に座らせる。スペックの違いを見せつける。
少し嬉しそうにしながら、面談室に戻ってくれた。
やっと、やっと、即決を確信できた。
その後、さらに他塾グダが発生したものの、COルーティーンで解放。
本人の意思もあって、即決につなげられた。
終わってみれば3時間。通常の倍以上の時間をかけた。
しかし、普通なら即決にならないご家庭を即決できた。
そして何より…自分という人間全てをぶつけるような面談をし、心から預かりたいと思った子を無事に預かることができた。その満足感、達成感たるや。
しかし大切なのは、ここが始まりであること。
受験が終わったときに、今日の面談が成功だったか失敗だったか、決まる。