教育営業マンのビジネスblog

教育を売っている。教育ビジネスには、言うまでもなく、二つの軸がある。教育とビジネス。その、「ビジネス」の側面にフォーカスして語るblog。都内在住。

恵まれた凡才にできること。

気の置けない仲間との交流の時間。

つい出たのは今の上司の悪口。
それは自分の価値を貶めるものでしかないとわかっていた。しかし止められなかった。

自分に何を期待されているかわからない。
認められていない。
差別されているようにすら感じる。

文字に起こせば、何と幼稚な主観だろう。
他人に自分をわかってもらえると思うこと自体が、稚拙で厚かましい。
わかってもらえないのが当然。
届いていないのが平常。

しかし、そんな独りよがりな愚痴に、かつてのチームメイトや先輩は、真剣に耳を傾けフィードバックをしてくれた。

今日、思い出したことはふたつ。

ひとつ。他人は変えられない。自分の力で変えられるのは、自分だけ。
上司の愚痴を言うなんて、つまり上手く行かないことを上司のせいにするなんて、主体的でなさすぎる。営業マンは常に主体的でならなければならない。主体的でないことを、厳しく慎まなければならない。

ひとつ。与えられたチームは、自分にとっていつも最適だとは限らない。しかし、自分にとって最適と思える仲間は、チームの内外に必ずいる。
今日話をした仲間は、今私が所属しているチームのメンバーではないけれど、互いに理解し合い、踏み込んで話をし合える大切な人たちだ。そういう仲間が常に身近にいることを思えば、現状与えられているチームについて不満を持つなど、わがままに過ぎる。

僕は恵まれている。
僕はいつも恵まれている。
心ある仲間たちに、自らの凡庸を、ときには低能を、いつもフォローしてもらってきた。


それなのに、僕は主体的でなかった。
自分にできる最大の恩返しは、主体的であることだ。


湿度の高い気怠い夏の夜に、感謝と反省を同時に手に入れた。

徒労、あるいは。


あくまで即決を目的とする1〜3
http://hitori0406.hatenablog.com/entry/2014/07/10/013352


先日の記事で、苦労して入会してもらった生徒が、やめたいと申し出て来た。

それを聞いた瞬間、ショックではあったが、焦りはしなかった。
理由はどうであれ、この退会は止められると思ったからだ。
絶対に止められる。なぜなら、僕がその子に本気でやめてほしくないと思っているからだ。
僕が自分のためでなく相手のためにやめてほしくないと本気で思っている以上、やめるはずがない。

とはいえ、手を抜いてはどうなるかわからない。
全力で対応を行う。

昨日が、退会面談のアポ日だった。

前日に、本人と電話で話していたから、本人の様子はある程度つかめていた。

精神的にかなり参っている様子であった。
母に当たり散らした、勉強のために拘束されるのが苦しくなった、と伝えてくれた。
面談では、あんなにキラキラと話してくれていたその子が、勉強が嫌になってしまったと言った。

様々な角度から話をする。

本当にやめていいか、聞く。

わからない、と返事。

印象的な言葉があった。

「やめたいと言ったときと今とでは、自分が違う」

この言葉があまりに不可解だった。

結果、僕はこの子の引き止めを諦めた。

その子は、苦しんでいた。
誰かに、やめようと言ってもらえるのを待っていた。
自分では決断できないでいた。

最後の最後、その決断を促したのは僕だった。

いつもの、最後の最後は腕力で持っていくスタイル。それが出せなかった。そんなエネルギーは残っていなかった。

あれだけ苦労して入会にこぎつけた生徒を、いともあっさりと手放してしまった。

徒労感にまみれて一日を終えた。

教育営業の意味を狭義にするな

ある種の塾にとっては、春以上の入会が出るのが7月。
その7月が終わり、振り返ってみれば去年の半分ほどの新入会生しか獲得できなかった。

大雑把な振り返りとしては、入会面談への反省よりも、むしろそこへ至る過程への反省が大きい。
問い合わせの数が例年より少なく、さらに問い合わせから面談に至る数も少なかった。面談から入会に至る率は昨年並みなので、ビハインドの要因は問い合わせ数と面談実施率にある。
問い合わせが少ないのはどこに原因があるか。
どういった手法で分析すべきか。

⚫︎問い合わせの種類
⚫︎問い合わせの方法
⚫︎問い合わせの発生住所

少なくとも上記3点は振り返るべきだが、それ以外にどんな手法があるものか。
勢いだけで30歳を超えてしまった。
スマートな思考できちんと分析しなければ、僕にも教室にも未来はない。

教育営業マンにとっての営業とは、入会面談のことだけではない。すべての営業数値の分析と正しい対策が打てて、初めて営業と言える。

未来は、ない、



信頼が大前提である

当たり前のことなのだけれど、技術やノウハウ、トーク例などを学べば学ぶほど、忘れがちなことでもある。

僕は営業の仕事を始めて以来、「まだ買ってないお客様には、与えすぎるな」という指導を受けてきた。試食でお腹いっぱいになったら、モノは買わないのだ、と。
それを思いきり間に受けたワカモノは、入会面談で絶対に進路指導をしなかった。

しかし、今一度前提に立ち返る。

顧客からイエスの回答を得るには、信頼がお互いの間になくてはいけない。
信頼を築くためには、得る前に与えなくてはならない。

今日、僕が信頼を築くために与えたかったのは、「確かな提案」だった。

推薦中心に考えている女の子。成績はよいが、学校のレベルは高くない。推薦には不利だ。

一般入試への覚悟も半分くらいでいいから、持たせたかった。

落としどころはあっても、そこへの道筋を見つけられぬまま、面談が進む。打開できたのは、半分偶然だった。
話すことがなくて、進路の情報を用意しようと席を立ったときに思い立つ。推薦とAOと一般、それぞれで受けられる学校のリストを持って席に戻る。

推薦の話から始め、まずはそこで頑張ろうと伝える。そこにたっぷり時間をかけた後、一般の話。英語と現代文だけで受けられる科目がこれだけあるよ、と。現代文は小論にも役立つし、今からやっておけば最低限のセーフティネットになるよ。
このへんの話で、生徒本人が強くうなずいてくれた。それまで不安や戸惑いの表情が多かったのと対照的だ。

果たして、結果は即決であった。特段即決させることを意識した面談ではなかったが、生徒本人からのたしかな手応えのある内容で、結果として即決にできた。

信頼が前提にある。

それを目指すことは、自分のためにもなる。

心を誘導することは行動を誘導すること「相手に気づかれずに相手を動かす心の誘導術」内藤誼人

 

 

 

心理学は営業マンが習得すべき必須の学問のように思う。

最近では、大学は心理学科に入ってみたかったと思うほどだ。

 

心理学の本はいくつか読んだが、最近手にしたタイトルの書も役に立つものだったので、簡単だがレポートする。

 

心理学者である筆者が、具体的な心理学の実験等をもとにすぐにツカエル心理学の技術を紹介する。

ひとつひとつのテクニックが、3ページずつでまとめられており非常に読みやすい。紹介されているテクニックも誰にも真似しやすいものばかりなので、即効性がありそうだ。

 

個人的にすぐに使ってみたいテクニックを列挙する。

 

●伝聞でにおわせると相手は暗示にかかりやすい

⇒人が言ったことや噂話として伝える方法。

⇒活用例:自教室を通っている生徒・保護者の言葉で褒める

 

●前もって伏線を張っておく

⇒「事前予告」。これからしようとすること、とりわけ相手にとってリスクやダメージのある内容を、「もし…だったら○○するよ」と先に伝えておく。

⇒心理的負担の大きいこと、いわゆる「面倒くさいこと」は、早めに伝えたほうが、精神的コストが少なくすむということらしい。

⇒活用例:「ダメだったらあっさり断ってもらっていいんですけど、話を聞いてみてもしいいな、頑張ってみたいなって思ったら、思い切ってここで決めちゃいなよ」

 

●人を誘導したいならきちんとした服装を

⇒権威を感じさせるためには、服装の力も重要。

クールビズで半袖が許容される世の中だが、ネクタイとジャケットは身に着けたほうが、権威や信頼を感じさせることができる。

⇒実践済み。

 

●まずは相手を信用させることが前提条件

⇒誘導を成功させるには、「この人の言うことは信頼できそうだ」と感じさせることが前提となる。

⇒小手先だけではダメということ。当然だが、教務の知識・学校の知識・子どもをやる気にさせるスキルなどが必要になる。

⇒一方、逆説的だが、そういった「本質的知識・本質的スキル」を上手にアピールするには、心理学の誘導の手法が有効だと考える。

つまり、教育者としての資質と心理学者としての資質、どちらも等しいバランスで成長させないと教育営業マンとして一流は目指せないということだ。

 

●「手の動き」で相手を巧みに誘導する

⇒縦にうなずく動作を繰り返すと、人は「イエス」の返事をしやすい心理状態になってしまうそうだ。

⇒そして、人は縦に動くものを無意識に目で追ってしまう。

⇒相対する相手からイエスをもらいたいときには、ジェスチャーに「縦に動く手」を入れるとよい。

⇒しかしこれこそ先述の「信用が前提条件」が当てはまるスキルだと思う。

 

●キーフレーズは少しだけ大きな声で

⇒一本調子・フラットなしゃべり方は、相手に伝わりづらい。こちらが伝えたい重要なポイントを、わずかに大きな声で伝えると、説得力が増す。

 

●言葉でなく行動でアピール

⇒「やる気がある」と口に出すより、早い時間にその場に到着するほうが、説得力がある。

⇒実践:出勤は30分以上早く勤務場所に到着する。

 

●誘導を成功させるには「勢い」が大事

⇒説得力は、話の内容だけでなく、声の力強さや話者のテンションにも左右される。

⇒営業のシーンでは、元気よく、自信を持って。

 

●交渉ごとでは、最初に大きな提案をぶつける

⇒最初の提案が基準点となり、それより難易度の低い後の提案が通りやすくなる。「アンカリング」という技術。

⇒活用例:「もし週5回だと費用はこちらです…、では週3回だといかがでしょうか?費用はこちらです。」

「夏休みは、これくらい学習をするとよいと思うんだけど、どう?・・・あっ多いかー。だったらこれくらいできると、この単元まで勉強進むからいいと思うんだけどなー、、、おっ大丈夫そう?じゃあお母さん、この回数だと費用は・・・」

HUNTER×HUNTERのジンも、言及していたテクニックです。曰く、「チンピラと詐欺師の常套手段さ」。

 

●キミに向いているとあえて決めつける

⇒相手にこちらの望んだ行動をとらせたいときに、「君は○○な人間だね」とレッテル貼りをする。人は、他人から言われた自分像を意外と安易に信じ込む傾向がある。

⇒活用例:「○○くんって、実は受験に向いているタイプだねー」「○○くんには・・・の指導法ぴったりだと思うよー、正直向いてない子もいるんだけど、○○くんなら・・・」

 

●相手の本音を見抜き、その方向で誘導する

⇒「誘導のテクニックが本当に効果を発揮するのは、相手が少しでも「その気」になっている場合だけである。」(引用)

⇒上記の言葉がすべて。繰り返すけれど、「信頼が前提条件」ということなのだと思う。

 

●同じセリフを繰り返す

⇒大切なことは繰り返して伝える。「安いよー」でなく、「安いよ、安いよ、安いよー」。

⇒活用例:「こうすれば、○○くん、成績上がる上がる上がる!」

⇒ちょっとちゃらいというか、いかにも営業マンらしいトークになってしまいかねない気もする。嫌味にならない程度に使って、少しずつ自分のモノにしていこう。

 

●自己暗示は何度も繰り返せ

⇒自分の成長は自分の意志が決める。

⇒セルフイメージを高く持つ。

⇒そのために、トランス状態に入るためのルーティンを決める。そのルーティンを常に意識し、繰り返すことで、思い通りにトランス状態に入れる体質をつくる。

 

以上。

あとがきで著者も述べているが、当たり前といえば当たり前のことも多い。あ、これもうやってるなーということもいくつかあった。しかし、それでいい。

以下は僕自身の考えだ。

 

①誘導は、大前提として「信頼の構築」が必須である。

誘導の技術は、いわば表面的な誘導なのであって、根っこのところから相手の思考や行動を変えさせるには、「信頼」が最も重要。誘導の技術を特別な「必殺技」だと思い込み、それのみに頼ることにはむしろリスクがある。

 

②当たり前のことこそ、積み重ねて効果がある。

誘導の技術に「知っている/使っているものがある」ではダメ。「知らない/使っていないものがある」ことが問題。

誘導の技術は、いわば相手に合わせて様々なスキルを組み合わせて使いきって、ようやく「イエス」の閾値にぎりぎりたどりつくかどうかというものだと捉えるべきだ。

 

③さまざまな人が、違う言い方で同じことを言っているのだということに気付く。

社内で受けた営業研修で、「相手の価値観を知ることが重要だ」とあったが、これはまさに本書で言われていた「相手の本音を見抜き、その方向で誘導する」に当たる。

他の本や他の人が伝えてくれたことの証左を、心理学という学問が私たちに与えてくれる。

自身の中で確証の深まった知識は、身体化されやすいはずだ。

 

 

価値観の化けの皮

価値観を知る手法はかなりわかってきた。

⚫︎志望校を聞く
⚫︎兄弟の受験の有無を聞く
⚫︎子どもの現状に対する評価を聞く

その他、相手の言葉で気になったことはさりげなく追求する。

価値観がわかると、それを肯定するタイプの言葉を使えば信頼度合いが増すので便利だ。
しかし、価値観が当方にとって不利であり、かつ確固である場合、面談は困難である。

本日面談したご家庭は、教室の規模に強いこだわりを持っていた。こだわっていたのは主にお母さん。以前通った塾で、大きな塾だったがよくない思いをしたようだ。

これを覆す方法を思いつけなかった。

先生へのこだわり。
それって、規模が大きかったことがよくなかったんですか?
そんな言葉が頭をよぎったが、口に出すタイミングを逸した。

それがいけなかったのか。

いや、そうではない、おそらく。

大中小様々な規模の塾を見たいと言っていた、それはたぶん明確な根拠を持っていたのではない。
お母さんはたぶん、ただ単純に塾を比較検討したかったのだ。
そのバリエーションとして、規模を分けてみようと思い立ったにすぎない。いわば、思いつき、だ。

つまり、いつもと同じように、ほかを見る必要がないと思わせる面談を目指せば、それを実行できれば、即入できたのだ。

お母さんの、規模に関する言及があまりに多かったため、それが重要な価値観であると思い込んでしまった。

話しながら、頭は回転していたか?
真意を探ることはできていたか?
わからないことを率直に尋ねる質問を繰り出せたか?
主体的であったか?

人の話を聴くということにはお金をもらうだけの価値がある 阿川佐和子「聞く力」

数々のインタビューを繰り返した筆者の経験が、成功譚や失敗談とともに語られる。本当に自信がなさそうにすら思える語り口が、謙虚で心地よい。

インタビューを題材に聞くということの技術について書いたこの本は、私たちの面談という仕事に生かせることをたくさん語ってくれた。

とりわけ私が重要に思ったことは、準備はするし質問の項目も考えるが、質問リスト通りに話すのはよくない、ということだ。

会話はナマモノ。ライブだ。
きちんとキャッチボールを行ったほうが、相手のテンションもあがる。テンションが、契約に甚大な影響を与えることは、語るまでもない。

読んでよかった本であった。